Synthesizer Shop Back to ’88 KORGとかKAWAIとかもろもろ編
今回はRoland編、YAMAHA編に続きまして88年のKeyboard Magazine広告欄を眺めながら、当時の楽器店の店頭にタイムスリップする、KORGとかKAWAIとかもろもろ編です。
まずは記録的大ヒットとなったあのシンセが登場しています。
KORG MUSIC WORKSTATION M1 1988年発売。定価248000円。
“この「音」に、世界の熱い視線がある。 ー圧倒的なサウンド・パワーで、世界を揺るがせ続ける「M1ミュージックワークステーション」今、すべてのクリエイターの情熱は、必ずこの音にたどり着く。”
KORGが満を持して投入したAI Synthesis Systemを搭載し、2系統のステレオマルチエフェクト、8トラックシーケンサーとほぼ完全なオールインワンシンセの元祖的な機種です。シンプルなパネルデザインと丸いボタンがなんとも斬新でした。
88年はKORGにとっては何と言ってもM1 Yearだったわけですが、他にも当時のメインラインナップとしては・・・
KORG Performing Synthesizer 707 1987年発売。定価99800円。
デザイン的にはM1よりもちょいと早くに出ていたのですね、この丸ボタン。4色選べる49鍵。電池駆動でショルダーキーボードとしても使え、ちゃんとホイールの反転も設定出来ます。私はピンクを購入し、時々ライブで使ってました。これ、同時期に発売した61鍵のデジタルシンセDS-8と同じ音源で、YAMAHAのチップを使ったFM音源なんですよね。パラメータはかなり簡略化されていて(いわゆるオシレータ、フィルター、アンプって流れで)適当にそこそこの音が作れるのですが、音は薄っぺらい4オペ系統のFM音源そのものです。しかも凝った音作りは出来ませんでした。
さらに当時のKeyboard Magazineの広告で、発売が予定されていた16トラック本格シーケンサーのQ1、そしてサンプリングシステムと16トラックシーケンサーを搭載したS1ですが、これら価格未定となっていますが結局発売されることはなかった機種です。紙面には写真まで載っているのに。
それからM1と似たようなデザインの音源モジュールで、PIANO MODULE P3(定価65000円)、ORCHESTRA MODULE Symphony(定価65000円)も発売されています。専用カテゴリー別の音源モジュールって少し後のE-muのProteusシリーズみたいな感じですかねぇ。
ドラムマシンではDDD-1に続いて発売された廉価版のDDD-5が掲載されています。
KORG DDD-5 1987年発売。定価69800円。
29音色搭載。ディケイやピッチ、パンなど音色、音符ごとに結構細かい設定が可能でROMカードで音色を増やせるなど当時この価格帯ではかなり凝ったことが出来る面白い機種でした。高校時代、Roland TR505とこれを使ってました。ただパッドはヴェロシティが付いてるもののすごく押しにくかった記憶があります。音はボサボサした感じの当時でもとてもローファイな質感のものでした。
また当時はまだマルチエフェクターがなく、KORGでもデジタルリバーブが単体で販売されていまして、2UラックタイプのDRV-3000が定価138000円、1UタイプのDRV-2000が定価78000円で紹介されています。まだまだエフェクターは高価な時代だったんですね。やっとM1にマルチエフェクターが搭載されたくらいでそれ以前にはDW8000やDS-8にディレイが内蔵されていたくらいですから。
また、サンプラーでは87年発売のDSM-1がまだまだ現役でした。後に私も中古で入手しましたがあまり使いこなせず手放してしまいました。
KORG DSM-1 1987年発売。定価348000円。
あとは当時コレまた個人的に購入、使用していた2Uラックタイプの12chラインミキサーKMX-122(定価69800円)も88年に登場していたようです。
とこんな感じで80年代、それまでデジタルシンセの時代に突入してから経営的に厳しくYAMAHAの傘下にあったKORGですが、88年、ようやくM1のヒットによって長い暗黒時代が終わりを告げるのでした。
そしてYAMAHA、Roland、KORGに続いて国内デジタル楽器シーンではKAWAIもなかなか独創的な製品を多く発表していたのもこの頃の面白さです。
KAWAI K1 1988年発売。定価99800円。
61鍵、VM音源搭載、16音ポリ、8ch分のマルチモードとコンパクトなボディながら必要充分な機能でなかなかのコストパフォーマンスです。音源モジュールタイプのK1m(定価56000円)もありました。
また独創的な倍音加算式の音源モジュールK5m(定価175000円)も紹介されています。
そして未だに私が愛して止まないシーケンサーの名機、Q-80もこの88年のデビューです。
KAWAI Q-80 1988年発売。定価69800円。
プレイ中に自由にON/OFF可能な独立32トラック、3.5″2DDのFDD搭載。未だに2台所有、使用しています。
そしてKAWAIのリズムマシンでは
KAWAI R-50 定価49800円。 内蔵音色の異なる兄弟機R-50e(定価49800円)もありました。
とまぁ、各社個性的な機種が続々と登場していた88年ですが、この他にも・・・
CASIO FZ-1GX 定価198000円。87年発売の16ビットサンプラーFZ-1(定価298000円)のマイナーチェンジ機種ですが、ほぼ中身は同じで実質10万円の値下げという大盤振る舞い。ちなみに88年の広告では、ラック版のFZ-10M(定価320000円)が特価で198000円で売られています。
CASIO VZ-1 定価148000円。こちらはCZシリーズの発展系でiPD音源搭載、16音ポリのデジタルシンセです。2UラックタイプのVZ-10M(定価128000円)もあり、音の太さでは定評のあるシンセですがあまり売れてはいなかったようで、程なくCASIOはシンセ市場から姿を消すことになります。
そして他にもこの時期とても元気なのがAKAIです。
AKAI S1000 1988年発売。定価498000円。 S900で国内サンプラー市場のスタンダードの地位を築いたAKAIが満を持して発表した16ビットステレオサンプラー。
AKAI VX600 1988年発売。定価165000円。37鍵、6音ポリ、2VCOのアナログシンセ。これはレアですね。私も実機は見たことがありません。他にもAKAIでは76鍵のMIDIマスターキーボードMX76(定価195000円)や、1UタイプのマイクやパッドからのトリガーをMIDI変換するAUDIO/MIDI TRIGGER ME35T(定価40000円)などの珍しいMIDI便利小物も発売されていました。
他にも海外モノではKURZWEILのラインナップが掲載されています。
KURZWEIL K-250 定価2980000円。Stevie Wonderも愛用していたという名機。当時はこのデカさに憧れたものです。とても手が出る価格ではなかったのですがそれでもFairlight CMIやSynclavierに比べれば何十分の1の価格ですからね。鍵盤部分のみのMIDIBOARD(定価248000円)なら何とか買えたかもですが、鍵盤のみですからねぇ。さらにK-250サウンドを引き継いだ廉価版といいますかPCM音源のK-1000(定価248000円)もありましたが。
ほかにも海外ものでは
Oberheim Matrix-1000 定価69800円。アメリカの名門OberheimのMatrix-6の音源部を1Uに擬縮して800ものプリセットを搭載。本体でエディットは出来ないものの本物のOBサウンドが手軽に得られるということで結構人気の機種でした。
さらに海外サンプラー市場では・・・
E-mu Emulator III 1987年発売。定価2800000円。16ビット44.1kHz、ステレオサンプラー。SMPTE同期対応の16トラックシーケンサーも内蔵。Depeche Modeに憧れて欲しかったなぁ・・・当然買えませんでしたけど。
E-mu Emax 定価665000円。こちらは12ビットの廉価版、Depeche ModeもステージではEmaxを使ってたっけなぁ・・・これでも買えませんでしたけど。でもこのパネルデザイン、斜めのラインのレイアウトがカッコよくないです。ラック版は定価598000円でした。
というわけで3回に渡ってお送りしてきましたSynthesizer Shop Back to ’88、いかがでしたでしょうか。多少でも当時の楽器店のデジタル楽器コーナーの雰囲気が伝わったでしょうか。まだまだあるのですが、キリが無いので今日はこの辺で。また機会がございましたら別の年代にでも行ってみましょう。