1986年 サンプラー事情

Posted: 12月 13, 2012 カテゴリー: Synthesizer & MIDI
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1986年 サンプラー事情

今日は久しぶりに80’sのデジタル機材ネタで、いきなり1986年と。たまたま手元にあった1986年7月号のKeyboard Magazineをネタに当時、それまでプロ機材の特権であったサンプラーがやっと我々アマチュアミュージシャンの手の届く?価格帯に降りてきて選択肢も豊富になった時代背景とともに見ていきましょう。

以前、Fairlight CMISynclavierなどの80’sモンスターマシンをご紹介いたしましたが、他に当時メジャーなサンプラーというとあのE-mu SystemsのEmulator(1982年発売。定価3000000円)です。EmulatorはFairlight CMIやSynclavierなどの大規模なスタジオ用据え置き型システムと違い、キーボードタイプでライブにも使用出来、またE-mu社の戦略であるその豊富な音色ライブラリーによって多くのミュージシャンの支持を得ました。

EmulatorII
E-mu Systems Emulator II 1984年発売。定価2980000円。

というわけで、Emulatorの世界的ヒットにより様々なミュージシャンがサンプリングを取り入れた曲を作り、ライブステージなどでも使用されることとなり、サンプリングはもはや珍しいものではなくなりつつありましたが、それでもまだアマチュアの手の届く価格帯とは言い難いですよね。そんな中、1985年に衝撃的な登場を果たしたのがアメリカのEnsoniq社のMirageでした。ラックタイプのDMS-8が定価318000円、キーボードタイプのDSK-8が定価398000円と、何とかローンなどであればイケるか?という現実的な価格で、それまでサンプリングに憧れていたアマチュアミュージシャンはこぞって飛びついたのではないでしょうか。Mirageのスペックは30kHz、8bitでサンプリングタイム2秒という今ではお話にならない、それでどうやって音楽するの?ってなものですが、当時はサンプリング出来ること自体が「夢」であり、Mirageでも強力なVCF(アナログフィルター)やEG(エンベロープジェネレイター)を通すことで、この「2秒」のネタでも充分シンセサイズして使える音色とすることができました。もっとよく言えば当時の他のプロ用機材と違い8bit独特の音のざらつきがキャラクターとさえなっていました。さらにはNEC8801用やMacintosh用にビジュアル・エディティング・システムも発売されPC上での波形編集さえも出来ました。ちなみに当時のKeyboard Magazineの広告欄の一角にMacintosh PLUSが掲載されていますが定価648000円ということでこちらも今のPCの価格からは考えられない、改めてびっくりですね。

ensoniq_mirage
Ensoniq Mirage Digital Sampling Keyboard(DSK-8) 1985年発売。定価398000円。

そして時代はAKAI Sシリーズの登場によりいよいよサンプラー戦国時代?へと突入です。1985年Ensoniq Mirageに対抗して国産メーカーのサンプラーとして登場したのがAKAIのS612です。何と定価はMirageの半額以下!定価168000円でした。これならボーナスや貯金をはたいて楽器店から即お持ち帰り可能?な金額です。スペックは32kHz、12bit、サンプリングタイム最大8秒といった感じでそこそこ使える?範囲ですよね。ただし、S612にはディスクドライブが内蔵されておらず、別売の2.8インチクイックディスクドライブを購入する必要があり、本体と合わせると20万円以上になったようです。

AKAI_S612
AKAI S612 1985年発売。定価168000円。

とMirageに比べ圧倒的な低価格でデビューしたS612ですが、翌1986年にはその後のスタンダードとなるS900が発売されます。こちらはS612から大きく機能も価格もアップしています。スペックは7.5〜40kHz、12bit、サンプリングタイム63秒〜11.75秒、3.5インチフロッピーディスクドライブ内蔵、32マルチポイントサンプリング、MIX OUT、STEREO OUTの他、8ボイス独立OUTを装備。また本体にテンキーや大型コントロールダイヤルを装備するなど操作性も向上、当時としては大型の液晶ディスプレイも装備しエディットのしやすさも売りでした。定価は385000円でした。そしてAKAIの意気込みが感じられるのが、S900ではホワイトボディに赤い文字のロゴが「AKAI Professional」となっているところですね。その後のS3000シリーズまで受け継がれるホワイトボディは今見てもとても美しいデザインです。当時からプロミュージシャンのラックの中でもこの「白い」のが見えるとAKAIだな?なんてすぐ分かって目立ってました。

AKAI_S900
AKAI Professional S900 1986年発売。定価385000円。

これでEmulator、Mirage、S900とほぼスタンダードなサンプラーが出揃ってしまった感がある1986年でしたが、他のメーカーも黙って見ていた訳ではありません。以前、ちょっとだけ私が使用していた時期のあることでご紹介しましたKORG DSS1、DSM1も1986年(DSM1は87年)に登場していますし、SEQUENCIAL CIRCUITからはPROPHET2002(定価850000円)という意味不明な型番?(何故に2002?)や、RolandからS50(定価320000円)、87年にはCASIO FZ1(定価298000円)、YAMAHA TX16Wが国産初のステレオサンプラーとして登場します。ただ、これら後発の国産サンプラー達は性能や機能的には個性的かつパワーアップを図っていたもののEmulatorやAKAI S900のようなスタンダードになるには至りませんでした。これはサンプラーという機材の性質上、E-muにしろ、AKAIにしろ、すでに多くのサウンドライブラリーが充実していて、アマチュアがこれに対抗して自分でゼロからサンプリングして音作りするということはあまりにもハードルが高過ぎ、結果、機能よりもライブラリーを選ぶということが大きかったと思います。

おまけに番外編としてはCASIOからSK-1定価16000円、や(コレ、私も買いました)やYAMAHAのVSS-100(定価45000円)などのお手軽サンプリング機能が付いたキーボードなんてのもありました。
casio_sk1
CASIO SK-1 1986年発売。定価16000円。

コメント
  1. […] 以前ご紹介しました80′sのサンプラーに関する話題でもありました通り、80年代はサンプリング技術が一気に普及した時代で、ポピュラーミュージックとの関わりで言えば、初期のサンプリング技術、打ち込み環境の進化の大きな原動力となったのはドラムサウンドの需要でしょう。何故って、生ドラムのレコーディングは大変なんです。10本前後のマイクを立てて自然に聴こえるミックスを作るのはプロと言えど一人で出来るものではありません。それにバンドで大概、曲を書くのはヴォーカルかギターなど、ドラマー以外の人間が多いので作曲の為にドラムをいちいちレコーディングしていたのでは時間や手間、予算が莫大にかかり効率的ではありませんから、そうした際に生のドラムの代わりとなるドラムマシンの存在は非常に需要があったのだと思います。それにドラムの場合は基本的にワンショットサウンドですので一部のシンバル系の音以外は非常に短いサンプリングタイムで済みます。要は持続音がないので高価で少ないメモリを効率的に使える楽器音なわけです。 […]

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