80′sアーティスト列伝 Thomas Dolby vol.3

Posted: 1月 21, 2013 カテゴリー: 80's Music & Artist
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80′sアーティスト列伝 Thomas Dolby vol.3

本日は久しぶりにThomas Dolbyです。前回に続き、vol.3ということで88年発表の彼の3rdアルバム「Aliens ate my buick」をご紹介しましょう。このアルバム、彼のカラーであるエレポップを超越した前作にも増して、その音楽性の幅広さがはじけています。前作までと違い、今作では何とバンドまで組んでいます。この時期、LAに渡っていた彼はローカル紙に自身のバンドのオーディションの広告を載せ、メンバーを集めたそうです。こうして集まったメンバーとともに1ヶ月ほどのリハをこなし、LAのクラブシーンに出演してライブをこなしてサウンドを固めていったというから驚きです。

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Thomas Dolby “Aliens ate my buick” 1988年発表。

1The key to her Ferrari2 Airhead
3 Hot sauce
4 Pulp culture
5 My brain is like a sieve
6 The ability to swing
7 Budapest by blimp
8 May the cube be with you

とにかく、このアルバム、エレポップなど期待しちゃいけません。バンドサウンド?それもどうでしょう。まぁアルバムの音源は例によってことごとく、彼お得意のFairlight CMIによって精密にプログラミングされているのですが、あくまでもバンドでの演奏を前提にした曲作りとなっています。強いてこのアルバムのカラーを表すと「ファンク」でしょうか。

M1の「The key to her Ferrari」はアルバムのオープニングナンバーにふさわしい勢いのある曲です。かなり派手です。何と邦題は「フェラーリをぶっとばせ」です。いきなりイントロのジャジーなランニングベースのフレーズとビッグバンド風のど派手なブラスサウンドにぶちのめされます。ヴォーカルもぶっとんでます。この曲のブラスサウンドではAKAI S900のいくつかのサンプルとRoland SUPER JUPITER(MKS80)を混ぜて使っているそうです。当時、この組み合わせでライブでも使っていたそうです。かっちょいい!この疾走感、さりげなくギターのバッキング、狂ったピアノのトリル奏法など、歌、演奏、すべてがいっちゃってます。


“The key to her Ferrari” 映像はよく分かりませんが・・・

M2の「Airhead」はすごくタイトなシンセベースとドラムで始まります。心地よいピアノのバッキングはRoland MKS20のサウンドにコーラスをかけているそうです。そう、この当時のライブでは彼はほぼヴォーカルに徹していてYAMAHA KX5をかついでピアノ系のバッキングしかしていませんでした。そのピアノサウンドの音源もMKS20らしいです。他のシンセパートはバンドのもう一人のキーボーディスト、Mike Kapitanが担当していたそうです。しかし、この曲、リズムが非常にタイトで小気味よく跳ね気味なんですが、ドラムのコンプ具合なんかも異常に詰まってますね。そしてミュート気味のギター、コーラスがかったピアノ、ゲートリバーブのかかったブラスのオブリガートと、空間処理もすごく立体的です。そして時折アクセント的に力強く弦をはじいたエレキベースのサウンドがかぶさったり。楽しさ満点の曲です。


“Airhead” こちらも映像はよくわかりませんね・・・


“Airhead on TV show 1988”  こちらは貴重な当時のTVでの生演奏の映像です。

M3の「Hot sauce」はとってもファンキーな曲。バッキングのワウギターなんかもかなりイケてます。ベースのはじけた感じのパターンと次々にフレーズやサウンドが変わっていくギターの重なり方が面白いです。またピアノはこの曲でもRoland MKS20(当時のお気に入りらしい!)が使用されています。


“Hot sauce” 楽しいPVですね。

M4の「Pulp culture」はさらにファンク!でも打ち込み臭さバリバリの組み立て方なのでエレファンク?って感じですね。チョッパーベースの打ち込みとかフルート系のサウンド、マリンバ、使ってる音が渋い。この曲ではあらゆるサンプリングサウンドも満載でほとんどFairlight CMIだけで作った曲らしいです。そして何より彼のヴォーカルの表現力の幅広さ、これはやっぱり魅力です。このリズム感覚。


“Pulp culture” ビデオないんですよね、この曲。でもこれをFairlight CMIで作っちゃうって職人芸ですね。

M5の「My brain is like a sieve」は能天気な感じのほんわかした曲です。おもわず口ずさんでしまいそうな歌い出しで聴いてるだけでハッピーになれる曲です。


“My brain is like a sieve live 2012” こちらは近年のライブ映像です。肩の力の抜けたシンプルな演奏ながらも曲の良さが良く分かるいいライブですね。

 

M6の「The ability to swing」は淡々としたベースに雰囲気もののサウンドで始まるイントロで引き込まれます。この曲の間奏のピアノのブルージーな雰囲気、大好きです。M7「Budapest by blimp」は彼ならではの味のある曲です。

そしてアルバムを締めくくるM8「May the cube be with you」はこれまた、どファンクな曲です。この曲のベース、すごい好きですね。そしてこれまた能天気なメロディも。


“Maybe cube be with you” 動画のタイトルに(Live)とありますがライブではありませんよね・・・

アルバム通して、今作の彼のヴォーカルはとても自由で、とても気持ちよく歌ってるんだろうな、っていうのが伝わってきます。メインのヴォーカルラインのみならず、重ねてあるアドリブやらコーラスやら、いろんな彼の”遊び”なんかも聴き込むと面白いです。

1作目、2作目とまったく毛色の違った(ジャケットが衝撃のB級映画の看板風?)今作はファンの間でも非常に評価の分かれるところですが、私は大好きですし、他のアルバムに負けないくらいかなり聴き込んでいます。なんてったって歌も演奏も楽しそうってのがいいですね。やりたい音楽を贅沢にやってる感じがして。純粋にエレポップ色はないアルバムですが、いくつかご紹介した通り、キーボードの音色などもこだわりを感じますし、何と言ってもフレーズと音色のチョイスのセンスが抜群でそこはやはりThomas Dolbyたる所以です。

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