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YAMAHA QY10、歩くシーケンサー

Yamaha_QY10
YAMAHA MUSIC SEQUENCER QY10 1990年発売。定価39000円。

1984年に登場したQX1以降、YAMAHAのMIDIシーケンサーシリーズはQXで統一され、同7、21、5、5FD、そして1988年、最終型にして完成形のQX3で完結し、その後時代のニーズはシンセ内蔵型(いわゆるワークステーションタイプ)へと以降しつつありました。

そんな中、YAMAHAが新たに提案してきたのがこの音源内蔵型・小型軽量シーケンサーQY10でした。これ1台でゴム鍵盤ながら打ち込みも出来、マルチ音源も内蔵し作曲が完結してしまうというもので、当時の広告のキャッチコピーが「シーケンサー、歩く」というものでした。VHSビデオカセットサイズと紹介されてました。幅広いジャンルをカバーするドラムやベース・コードなどのプリセットパターンも76パターン内蔵しており、オリジナルパターンも24パターン登録可能で、dimも含めた20種類のコードもプリセット済み、極めつけは電池駆動でどこでもすぐにアイディアのスケッチが出来る優れもので当時大ヒットしました。音源も1ドラムキットを含む30音色、AWM音源、同時発音数28音とバッキングをこなすには充分な内容でした。その後も90年代を通してQYシリーズは人気を博しました。

この頃、私は個人的には丁度、地元のヤマハ系列の楽器店に勤務していたのですが、確かにコレ、よく売れましたね。その手軽さからそれまで打ち込みなど興味のなかった層の方々にも広く受け入れられてました。そういう意味では打ち込みの敷居を下げたマーケティング的に成功した製品ではないでしょうか。一方、翌91年には対抗するRolandがSound Canvas SC55を発表し、DTM時代の幕開けとなるアプローチで、打ち込みのファン層を違った方に広げていきました。

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KAWAI Q80との出会い

kawai-q80

KAWAI Q80 1988年発売。定価69800円。32トラックMIDIシーケンサー。各ソングごとに100のモチーフと呼ばれるパターンメモリエリアを搭載。本体メモリ26000音。2DDフロッピードライブ搭載。

こいつとの出会いは衝撃的でした。それまでYAMAHA QX5で打ち込みをしていての不満が一気にすべて解消されました。発売後間もなく飛びついて購入しました。まさに一目惚れ状態でした。どんなにこいつが素晴らしいのか、ご説明いたしましょう。

まず、発売から20年以上経過していますが、我が家ではいまだに現役です。多分、一生手放せません。身体の一部のようなものです。本体メモリは電源を切ってもバックアップがあるので電源を入れれば、常に即作業に取りかかれます。トラック数も当時のシーケンサーとしてはずば抜けた32トラックを装備しています。Q80では各トラックに異なるMIDIチャンネルを混在させることはできません。ですので各トラックに最初にMIDIチャンネルを割り当てておく必要があります。私の場合、ラフな曲のスケッチを作る場合、1〜4トラックあたりまでをch10に割り当て、キック、ハット、スネア、おかずみたいな感じでベーシックなドラムパターンを作ります。次に5〜8トラックをch1にしてベースパターンをいくつか打ち込んでいきます。あとは残りの9トラック以降にウワモノをかぶせていきます。

こいつのすごいのはここからです。使いやすさ、その1は、各トラックのループさせる小節数がバラバラでもOKということです。例えば、キックは1小節ループ、ハットは4小節、スネアは8小節ごとにフィルインが入るなんてこともスムーズにループさせることが出来ます。しかも再生中に各トラックのON/OFF、差し替えなんかも出来るので、ループを走らせながらDJ的にパートを組み合わせていけるのです。私はこれが大好きで16トラックくらいのパターンをループさせながら曲をスケッチしてイメージを膨らませていくという曲作りにハマってしまいました。当時、この方法が出来たシーケンサーは他になかったと思います。まぁ、今で言えばGrageBandとかAcidみたいな、はたまたAbleton Liveみたいな手法なんですが。

こうして曲を煮詰めていってパターンの組み合わせみたいのが出来てきたら、さらに各ソングごとにモチーフと呼ばれるパターンをメモリしておけるエリアが100個もありまして、完成したパーツをモチーフにコピーしていって、最終的にマスタートラックみたいな使い方で残ったトラックにモチーフを並べていってソングを完成させる感じで打ち込んでいましたが、よくライブではソングすら組まずに32トラックを全部使ってループものだけでオケを流し、リアルタイムにトラックをON/OFFして演奏するなんてこともやってました。

それから、もうひとつ当時画期的だったのが、もっぱらリアルタイム入力派だった私の拙い演奏を支えてくれた「アクティブクオンタイズ」という機能でした。クオンタイズというのは入力された演奏情報を16分音符や32分音符などの単位でキッカリとタイミングを補正してくれる便利な機能なのですが、Q80のそれはこれをキッカリではなく指定した幅を持たせて(つまりモタリとかツッコミ感といった演奏のニュアンスを残して)補正してくれるというものでした。これにより、打ち込みといっても生演奏のニュアンスを残した演奏再生が可能となったのです。これは本当に気に入っています。そしてフロッピードライブも装備していましたので、曲がどんどん増えてもOK、これも大きかったですね。これだけの機能で定価69800円は衝撃でした。いまだに隠れたファンが多く中古市場でも手に入りやすいといいます。私は使い込み過ぎてPLAY/STOP/RECあたりのボタンがフッカフカになってしまい、途中2台目を中古で手に入れ、今現在現役で使っているのは2台目君です。後にバージョンアップ版としてQ80EXという後継機が発売されましたが、中古で狙うならこちらのほうがおすすめです。

80年代当時のMIDIシーケンサー事情というとYAMAHA QX派とRoland MC派の2代派閥が有名ですが、私個人としてはこのKAWAI Q80こそ史上最高のMIDIハードシーケンサーだと思います。実際、当時周りのいろんな人に勧めまくっていました。PC全盛の今、敢えてハードシーケンサーを使うメリットはあまりないとは思いますが、ご紹介したような曲作りの方法(まあ、これもPC上で手軽にできますが・・・)ならば必ずや、あなたの創作意欲を鷲掴みにすることでしょう。中古市場やオークションで発見したならば騙されたと思って入手されてはいかがでしょう?もし万が一、「騙された!使えねぇよ!」という場合、私が責任を持ってスペアとして引き取らせていただきますよ。


制限のある小さな世界

シンセサイザーなどの電子楽器についてよく思うのが、こと楽器に関しては機能的に制限されたチープなものの方がよりクリエイティブなものが生まれやすいということです。

私は古い人間なのかもしれませんが、シーケンサーひとつとってもPC上の広い画面の中で作業するより、KAWAI Q80の小さな液晶で作業したほうが音楽に集中出来るのです。むしろその方が快適なんです。PC派の方には「?」と思われるでしょうが、そして私自身もPC自体は大好きなのですが。音楽の打ち込みに関してはPC画面からの膨大な情報はむしろ邪魔で、音楽を創るという上で今自分がしている作業状態をシンプルに教えてくれるあの小さい窓で十分なんです。

シンセに関してもいわゆるプロ仕様の「コレ1台で何でもできまっせ」的なものよりも、この音が欲しかったらコレとか、ここはあのシンセのフィルターを効かせたあの音でなきゃ嫌だとか、そういう作り方の方が断然楽しいと思うのです。いまだにまだマルチティンバー化されてない時代の1台1音色の考え方なんですよね。何でも出来る高額なモデルよりも、安い機材を限界まで使い倒すとか、限界を超えた使い方を開発するとかいう挑戦の方が楽しいんですよね。

なので今までご紹介してきた機材やこれからご紹介していく自分の使用してきた機材のチョイスというのはいわゆるシリーズの廉価版であるとか、ミドルモデルが中心だったりします。まぁ、根が貧乏性というのもあるかと思いますが。

よくテレビゲームとかでも昔のドットの荒い画質のやつの方がゲーム性自体楽しめるとか言いますが、あれと似たようなことかと思います。最新のゲーム機だと処理性能は目覚ましい進歩のおかげでリアルな3Dを表現出来たりしますけど、それとゲーム自体が面白いというのはまた別の話なわけでして。

まぁ、そんな考えから私は「敢えて」安い機材を使ってきましたし、これからもそうありたいと思う訳です。考えてみたら私のMac遍歴もそうですね。一番高いやつなんか買ったことないですし。むしろ一番安いやつをどこまで楽しめるか的なチョイスがほとんどです。音楽には使ってないですけどね。意外と高いやつ買っちゃって「何でも出来る」なんて思うと何もしないんですよね、人間て。