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ざっくばらん!シンセサイザーの歴史

シンセの音源方式の進化をざっくばらんに?ご紹介いたしましょう。シンセの歴史の中でいくつかエポックメイキングになった出来事がありますが、まとめは最後にということで早速・・・

moog III

1960年代 シンセサイザー黎明期
1965年にロバート・モーグ博士がMOOG III(写真)を発表しました。シンセが楽器として鍵盤がついて電気的に音を発声させるという仕組みはこの頃から始まったようです。(その昔テルミンという鍵盤ではなく、手をかざして電気的に音を発声させる楽器はありましたが・・・)この時期のシンセは「タンス」と呼ばれるほど壁のように大きくそびえ立つものでした。この存在を世に知らしめたのがウォルター・カーロスの「スイッチト・オン・バッハ」というアルバムで全編通してこのMOOG IIIが使用されました。この他、キース・エマーソンやYMOの松武秀樹氏なども「タンス」愛用者として有名です。また、この「タンス」という呼称は狭義ではE-muのものを指すようです。

Minimoog

1970年代 アナログ・モノシンセ時代
Minimoog(写真)が1970年に発売。言わずと知れたアナログモノシンセの王者です。ライブステージでも活躍出来る大きさに小型化された最初のシンセでもありました。3VCO構成で音の存在感は絶対的で世界中のミュージシャンに愛され続けています。またそれまでのモジュラーシンセとは違い、パッチケーブルで音を合成していくのではなく、フロントパネルのツマミ(音・信号の流れが一目で分かる並びになっています)で簡単に音作りできるようになったのも広く使われた要因ではないでしょうか。このシンセはこの後、各社から続々と発売されるほぼすべてのシンセの基礎といっても過言ではないでしょう。70年代のアナログ・モノシンセでは他に、ARP Odyssey(1972年)やOberheim SEM(1974年)、国産ではKORG 800DV(1974年)などがあります。

prophet5

1980年前後 ポリシンセ時代
SEQUENTIAL CIRCUIT Prophet-5(写真)の1978年の登場は、ポリシンセ時代の到来の象徴でした。この当時各社からMOOG PolymoogやOberheim 4-Voiceなどのシンセが相次いでポリフォニック化を果たしていましたが、Prophet-5の画期的だったのは音色をメモリー出来たことです。以降80年代に入り、Oberheim OB-X、Matrix12、MOOG Memorymoog、KORG Polysix、YAMAHA CS80、Roland JUPITER8といったアナログポリシンセの往年の名機が次々に発売されました。

yamaha-dx-7

1980年代中期 デジタルシンセの登場
1983年にMIDI規格が誕生し、同年YAMAHA DX7も登場しました。DX7はそれまでのツマミやスライダーを多用したパネルデザインとは一線を画し、パラメータを呼び出して音色をプログラムするという使い方や16音ポリならではの弾き方も、そして何より新しいFM音源の登場によってシンセの音すらも変えてしまいました。他のメーカーでもKORG DWシリーズやRoland JX-8P、CASIO CZシリーズなどデジタル音源が登場しました。

KORG_M1

1980年代後期 PCM音源の台頭
1988年、KORG M1が発売されるや否や世界的にヒットしました。この頃のシンセ音源の流れとしては、サンプラーの普及とともに発展したPCM波形を効率よくシンセに取り込みよりリアルな楽器音を出すE-mu ProteusやRoland Uシリーズなどのサンプルプレイバック的な音源が主流となりました。またRolandからはDシリーズが、YAMAHAからはDXシリーズに代わりPCMを取り入れたSYシリーズなど登場し、一部の機種では他のシンセ音源とのハイブリッドにより、従来のシンセサイズも発展させたモデルも含まれました。

JD-800

1990年代 バーチャルアナログブーム
90年頃から再び、ビンテージとしてのアナログシンセブームが再燃することになります。この流れに当然、新製品としても昔のアナログシンセを彷彿とさせるRoland JD800が登場します。テクノやハウス系のムーブメントによって引き起こされたアナログシンセの再評価により、各社からもCLAVIA DMIのNord LeadやRoland JP8000、YAMAHA AN1xといった往年のアナログシンセサウンドを追求した機種が次々に発売されました。

そして2010年代現在はほぼあらゆるシンセの名機たちがPC上でソフトシンセとして再現出来る環境になっています。ここでシンセの歴史上の大きなポイントを順に整理してみると。

  1. 鍵盤をスイッチとして音を発声させる=楽器として扱いやすくなったこと。
  2. Minimoogの登場によりツマミによるパネルレイアウトでの音作りが完成したこと。
  3. 音色がメモリーできるようになったこと。同時期のポリフォニック化。
  4. 音源がデジタル化されたこと。同時期のMIDIの規格化。
  5. PCM波形を搭載したこと。

といった流れでしょうか。だいぶ大雑把なまとめではございますがいかがでしょうか。まだまだ歴史に隠れた名機もたくさんあると思いますので、今後もちょっとずつご紹介を続けていきたいと思います。


80’s洋物シンセ事情 Oberheim編

80年代のシンセ事情というとMIDI規格の浸透とともに急速に日本のメーカーが安価で高性能な機種を次々に発売していましたが、70年代からの流れと世界的なシーンを見れば、MoogやARP、Sequential Circuitsなどまだまだ高額なプロ仕様のアナログシンセが幅をきかせていました。これらはまた別の機会にネチネチとゆっくりご紹介したいと思いますが、そんな中にあってなかなか個性的で憧れていたシンセメーカーが今回ご紹介するオーバーハイムです。

会社の成り立ちや創業者トム・オーバーハイム氏についての詳細はWikipediaに譲るとしまして、私個人としましては、あくまで80年代、Oberheim社にとっては中期〜後期のOB-Xあたりからの印象がとても強いのです。当時流行りだしていたMTVのビデオクリップでVan HarenのJumpの中でエディがあのニッコニコ顔で弾きまくってたイントロから、あの間奏でのアルペジオ、そうです。あれが私にとってのオーバーハイムのイメージなんです。あの音、今聴いても気持ちいいシンセですよね。あとはNENAの99 LuftBallonsのシンセリフなんかでもオーバーハイムが使われていました。あの当時の分厚いシンセ音は大概Oberheimだったんです。めちゃめちゃ欲しかったのですが、当時の高校生にはとても手の届く楽器ではなかったです。

Oberheim_OB-X

Oberheim OB-X 1979年発売。とにかくでかい!重そう!そして後継機種としてOB-Xaが発売されたのが1981年、Van HarenのJumpで使われたのはOB-Xaの方です。音の存在感はOBシリーズ最強と言われています。さらに1983年、OBシリーズ最後の機種OB-8が発売され、OB-8の後期モデルにはMIDI付きのものもあるらしいです。OB-8の音はそれまでの荒々しさが若干薄れ少し上品な感じだという方が多いようです。

oberheim_matrix12

Oberheim Matrix12 1984年発売。定価998000円。24VCO、12音ポリ、MIDI標準装備。ベロシティー、アフタータッチ対応です。OBシリーズよりもでかくなってますよね。ある意味、オーバーハイムの頂点みたいなシンセです。

oberheim_xpander

同時期に音源モジュール版で12VCO、6音ポリのOberheim Xpander(定価648000円)というのもありました。Xpanderは当時楽器店の店頭で中古のものを試奏させてもらったことがありますが、「重い。重いよ〜。」という印象?の存在感でした。モワっとしたPad系の音でも芯があるといいましょうか。ま、当たり前にXpanderの中古でも買えませんでしたけどね。

oberheim_xpander

Matrixシリーズ(ネーミングがかっこいい!)としては廉価版のMatrix-6(定価298000円)も発売されました。こちらはMatrix12に比べて随分とスリムな筐体でした。さらにこの機種からオシレーターはDCOタイプとなっています。その後、さらに1UラックにOberheimサウンドを擬縮したMatrix1000(定価69800円)も発売され、こちらはプリセットサウンドが1000音入っているという我々アマチュアにとっては手頃で大変お得なモジュールでした。

Oberheimを語るには、先輩諸氏におかれましてはOBシリーズ以前の1975年発売の4-VoiceこそOberheimだなどというツッコミもあるかと思いますが、ここはひとつ「80年代においての」という意味でご理解賜ればと思います。昔も今も洋物シンセについてはほとんど所有したモノがなく、憧れだけで語っておりますがまた機会があればアレやアレなんかもご紹介していきたいと思います。